築40年を機に新会堂を建築することになった南光台キリスト教会。
一般的な教会建築に要する資金の約半分の予算が当初の条件でした。実現するには、コスト削減の様々な工夫を必要としました。
建築物そのものではなく、人が集まり祈りを捧げるという『場』が大切だと考えました。
強烈なインパクトで存在感を主張する教会堂ではなく、
むしろ見えない、物質的ではなく精神的な存在・・・つまり、土の中に埋まった丘のような教会をイメージしながら検証を進めていきました。
ローコストを追求すれば総2階に行き着きますが、2階建(1階を教会堂、2階を牧師館)にした場合、礼拝の声や牧師ご家族の生活騒音等、音の問題が課題になります。
その解決策として、床や壁を防音仕様としコストを投下するのではなく、別棟で計画する方法を選びました。
より牧師ご家族のプライバシーを尊重し、良好な礼拝環境が得られると考えたからです。
右側奥に見えるのは、牧師館(牧師ご家族の住まい)。
牧師館は、いかなる家族構成にも柔軟に対応できる構造とするために、木造スケルトン・インフィルの考え方を用いています。内部の間仕切壁はすべて取り払える構造です。
同じ面積ならば、正方形は長方形より外周の長さが短い。外周の長さが短ければ、壁面積も少ない。正方形平面は壁面積が最小となり、コスト削減が可能になります。よって、教会堂・牧師館とも、正方形平面で計画しています。
一方、教会は災害時のよりどころとなる場所です。
正方形であることはコスト面だけでなく、構造においても有効です。耐力壁をバランスよく配置し、良好な偏心率を得やすいからです。
教会堂建築に社会性を持たせる意味からも、できるだけ国産材(杉)使いたいという思いがありました。
牧師館の構造材は土台を除いてすべて杉を使用しました。教会堂は約13mのロングスパンを飛ばしているため、国産材(杉)のような細い部材を使うには架構に工夫が必要でした。杉と米松のハイブリッド集成材を用いて張弦トラスを構成することでクリアしています。
礼拝堂は、礼拝が行われる時間帯に合わせて陽の光が射し込むよう計画しています。
礼拝堂の照明器具はソケットと裸電球を使用しています。コスト削減のために電材を使用しましたが、無垢材と白い塗り壁が調和した優しい光を目指しました。
また、礼拝堂の天井も、一般的に仕上材として使用しない構造用合板の表しとしています。
教会堂建築は献金で建てられる公共性の高いものです。
よって、プロセスの透明性が必要となります。
48社に及ぶ競争入札の末、29工種に分割し分離発注した結果、大幅なコスト削減が可能となりました。
金属建具工事は競争原理が働き、驚異的な掛け率であったこともコスト削減に貢献しています。
コストの壁を乗り越え、晴れて竣工の日を迎えた南光台キリスト教会。
今、思えば、教会の建築委員の方々が、のびのびとこの建築を私たちに託してくれたことが、一番大きな原動力だったと実感しています。
所在地 | 宮城県仙台市 |
構造・面積 | 木造平屋建 162.31㎡ |
施工 | 建て主さん直営によるCM分離発注 |